細川の読書記録(1999

 

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生物改造時代がくる:遺伝子組換え食品・クローン動物とどう向き合うか

·         マイケル・ライス&ロジャー・ストローハン(著) 白楽ロックビル(訳)

·         共立出版

·         1999

·         2800

朝、朝日新聞紙を開いたら大きな広告。その日のうちに茗荷谷の共立出版までいって購入。(記憶では 15 日だが、念のため新聞紙を繰ってみてもその広告は見つからない。夢だったんか?)

著者は生物学と倫理学の専門家(ライスは進化生物学と集団遺伝学の研究で学位を取得した大学講師兼牧師、ストローハンは EU の顧問も務める倫理哲学者)で、読者(生物学の非専門家)が遺伝子組換え食品や遺伝子治療について、自分で判断できるように問題点を提示する目的で書いたと序文にある。

訳者は本来細胞生物学者だが、科学政策にも関心を示し「アメリカの研究費とNIH」「元気の出るオーストラリア」(いずれも共立出版)などを上梓している(関係はないけど彼のかつての教え子が科学政策を勉強すべく現在 NY に留学中)。訳者あとがきによれば「こういう本を自分で書きたかった」とのことで、翻訳の域を越えた書き込みもある模様。

著者の住むイギリス王国はアメリカ合衆国ほどではないにしろ多民族国家で、他宗教国家。そのため各宗派にも目配りがなされている。遺伝子組換え食品一般を可としても、宗教的禁忌というものがある。イスラム教徒もヒンズー教徒もヒツジは食うけれど、もしそのヒツジにブタやウシの遺伝子が組込まれていたらどうするか。たとえばウシの成長ホルモンが入った肉を食べてもウシを食ったことにはならないと異教徒は思うけれど、どうやらそう簡単なことではないらしい。もっともこの話をげらげら笑って読んだ人も、ヒトの遺伝子の入った豚肉を食うかと問われると豹変するかもしれない。(ヒトの遺伝子――それも数ある中の一つだし、当該組織で発現しているとは限らない――が入った生物の肉を食べてもそれと食人とは結びつかないと私は思うけれど、世の中には違う考えの人もいるらしい。)

消費者を説得(この言葉は強制・暗示・洗脳・条件付けといったニュアンスを含む)しようとしてはいけないと言いつつ、一方で事実を提示するだけでは無責任な主観主義容認になると賢明な踏みとどまりを示すけれど、さて大衆は妥当な判断を下せるでしょうか。何が正しいかはわからないかもしれないが、悪いことならだいたい見当はつく。でもそれも民主的手続きを経て選択されたならやむを得ないのか。合理的であることは正しいということを必ずしも保証はしないけれど、非合理的な判断は往々にして不幸を招来する。判断を誤ったがためにひどい目に遭ったとしても「みんなで間違えたんだからしょーがないよねぇ」ということで納得するのか(弾圧された少数派はそんなんで成仏できる?)。かと言って英雄気取りのバカの暴走は止めなければならないし、まして自分がバカを演ずることは避けたいし... ああ、今夜も熱帯夜。

原著は Improving Nature? The science and ethics of genetic engineering ,1996, Cambridge Univ. Press

1999/07